気になる数字

世の中数字がものを言います。メディアに現れた気になる数字を取り上げ


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 新聞や雑誌のメディアは統計やデータなどの数字であふれています。
 それは、一般的に数字が主観を排除したハードで冷徹な事実と思われているからですが、実際は、人々は数字を自分なりのコンテキスト(文脈)で利用しようとするため、それ自体は客観的であるはずの数字でさえ、主観的な意味合いを持ってしまうこともあります。
 そういうことに注意しながら、わたしがメディアで目にした数字を取り上げていきたいと思います。
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2000億円映画市場が抱えるジレンマ

2008年12月11日

 現在の日本の映画興行市場の規模である。(「映画・映像業界大研究」フィールドワークス - 産学社)
 一方、北米市場は約91億ドル。最近ドルが下がっているので、簡単に1ドル100円とすると、9100億円だから、ざっとみて4.6倍である。
 この差には、単なる人口の違い以上のものがあるようだ。

 人口からみると、日本は1億2800万人、北米が3億3900万人(アメリカが3億600万人、カナダが3300万人)なので、2.6倍となり、北米の方が人口比よりずっと多い収益を上げている。
 ところが、入場料収入の平均単価でみると、日本は1,233円、北米が6.55ドル(同様の換算率で655円)と、北米が日本の約半分となっている。
 総入場者数でみると、北米が約14億人、日本は1億6千万人となっていて、それぞれ総人口と対比すると、平均して北米では一人が1年間に約4回、日本では約1回という換算になる。

 これを平たく言いかえると、北米では日本の半分の値段で映画館の映画を楽しめる。手軽に楽しめるので、北米は日本人の4倍もよく映画を観ていて、その結果、一人当たりの興行収入も倍近く多い・・・。こんなところだろう。
 人々は安いので頻繁に映画館で映画を楽しめて、結果としてビジネス的にもそっちが儲かるということだ。
 じゃあ、なんで日本でもそうしないのだろう?
 安くすることで、人々が、映画館の大きなスクリーンで迫力ある映像を楽しむ機会をより多く持つことができ、結果として映画産業もより多くの収入を上げることができるという、絵に描いたようなWin-Winの関係になるのではないか、と思ってしまうが、それは単純すぎる予想なのだろうか。

 日本の映画館の料金設定をしている人は、安くなったからといって、その分だけ観てもらえる回数が増えるわけではないと考えているのだろう。経済のテキスト的にいえば、価格弾性値が小さいという予想を立てているのだろう。
 北米では、映画館で映画を見ることが、庶民の娯楽としてメジャーな地位を持っているのに対して、日本ではやっぱり「映画好き」のためのものでしかないということなのだろうか。
 でも、それは、そもそも入場料が高いから、そこまで払って映画館に行くのは、やっぱり好きな人だけだよねー、というなのかもしれない。

 気になることは、日本人が映画に行く頻度が少ないので、ヒット作品が特定の作品に偏っているということだ。興行成績別に公開映画の統計をとってみると、興行成績が、トップの成績作品の1割に満たない作品が、北米では55%なのに対して、日本ではそれが87%にもなる。トップ作品の30%以上でみると、北米では22%に対して、日本ではわずか6%だ。
 映画を見る人の気持ちとしては当然だ。
 年に一度しか映画館に行かないのだから、行くときはみんなが観ている一番の人気作品を観ようとするわけだ。
 でも、興行成績が一部のヒット作品に集中するということは、映画作りのリスクが極めて高いものになるわけであり、作る人たちにとってはきつい。
 リスクが高くなると、人は、かえってリスクを冒すことを恐れ、安全路線に走ろうとしてしまう。その結果、新しい可能性にチャレンジするよりは、売れた本の映画化とか、ヒット作品の二番煎じとか、確実に儲かるものにしか手を出さなくなるだろう。

 こうやってみると、高い映画館の入場料が、人々の映画館で映画を楽しむ機会を少なくし、ビジネス全体のパイを小さくし、いろんなテイストの映画を作りにくくしているということなのだろう。

 映画の世界も、まだまだ企業家精神がチャンスを生む素地がありそうだ。