小沢代表秘書の逮捕への対応で政権担当能力を試される民主党
2009年03月04日
なすすべもなく時間切れ負けを待つしかない自民党と、それを静かに見下ろす民主党という、まるで猪木・アリ戦のように沈滞した試合に、予想外のプレーヤーがリングに乱入し、「面白味のない」試合が、俄然、盛り上がりを見せてはじめた。
政治評論家は、「民主党にも幻滅した人々の政治離れが進むのではないか」という、つまらないコメントをしているが、総選挙の結果の不確実性が高まる中、人々の政治ショーに対する関心はむしろ高まりつつある。
公設秘書の逮捕に関して、民主党の小沢代表が行った釈明会見は、多くの人を納得させることはできなかったようだ。
一部には、「3年前の事で、総選挙を前にしてなぜこの時期に」と陰謀論をぶつ民主党関係者もいるようだが、犯罪事実の一部に公訴時効が迫っているし、選挙そのものがいつのことかわからない以上、強制捜査に踏み切ったという検察側の説明も理解できないわけではない。
公訴時効が迫る3年前の事件だからこそ、今、強制捜査に踏み切り、一刻も早く起訴まで持っていかなければならない、というのが検察の意図とすれば、それはそれでもっともなことだろう。
今回の公設秘書の逮捕を「国策捜査」として非難する主張の裏には、「政治資金規正法違反ごときのショボい犯罪で…」という意識が透けて見える。
しかし、政治利権の温床となる「企業から議員への献金」を禁止し、その脱法を防ぐために他人名義での献金を禁止するという政治資金規正法の規定は、一見、ただの形式犯にしか見えないかもしれないが、それが目指すものは重要だ。
政治献金を温床にしてはびこる利権を根絶するためには、政治に絡むカネの流れを規制し、透明にするのが一番だからだ。
その意味で、素人には分かりにくい政治資金規正法の「形式的な」規定は、その見かけによらず、日本政治の近代化のために、とても大事なものだ。
西松建設の裏金捜査で、このような問題のあるカネのやり取りが明らかになったとすれば、それは単なる記載ミスといった「形式犯」で済まされるものではなく、「不明朗な政治」そのものを摘発されたのと同じだろう。
まして、それが次の政権を担うと目されている野党第一党の党首であれば、民主党関係者が恨みがましく言うように、「何も今じゃなくて、選挙が終わってからでも」ということではなく、選挙で国民が審判を下す前にきちんと国民に知らせるべきだろう。
そうでないと、選ぶ国民の側からすれば、「投票した後にそんなこと言われても、もう後の祭りじゃないか。」ということになる。
その意味でも、この時期に明らかにされたことは意味があるだろう。
一部の新聞では、問題となった西松建設のダミー団体から献金を受けた政治家として、小沢代表のほかにも複数の自民党政治家の名前が指摘されていた。
中でも、尾身幸次氏や加藤紘一氏などは、小沢氏と同じ「桁」の資金をもらっていたし、二階派や藤井氏、森善朗元総理などの名前を挙がっている。
「これらの人たちはお咎めなしで、なんで小沢さんだけなんだ」という民主党議員の恨み節もわからないでもないが、問題となった献金が西松建設のトンネルだったという認識を立証するための材料が、小沢代表の秘書については「見事に」揃ったということなのかもしれないし、これらの人たちについても、同様に立証できるだけの材料が揃えば同じような強制捜査に踏み切ることになるのだろう。
さらに言えば、西松建設の小沢代表への「支援」は、相当の金額に上るものだし、かなり長い「歴史」を持つもののようだから、このようなトンネル献金のスキームについて、小沢代表本人がまったく知らないということは、普通の人の感覚ではにわかに信じがたい。
パーティー券を何枚か買ってもらう程度の関係であれば、「そんなこと、俺はいちいち確かめてねえよ。」と言われても、「そうかもしれない。」と思うが、10年にわたり3億円を超えるような金額の支援を受けているとすると、その出所についての「隠された真実」を知る機会がまったくなかったというのは、あれほどの政治家だからこそ、考えにくい。
もっとも、小沢代表が「知っていた」ということを立証するのは、物証では難しいだろうから、検察の狙いは、今回逮捕した公設秘書の「口を割らせる」ことだろう。
だとすると、本人に「自殺」されては元も子もなくなるので、きちんと身柄を押さえておくことも大事だし、検察の常套手段として、公設秘書を小沢代表本人の影響力から切り離し、裁判での温情措置を仄めかせながら、捜査に「協力」させるという狙いもあるのかもしれない。
いずれにせよ、狙いは小沢代表なのだろう。
検察の捜査意図が実現された場合の、政治的マグニチュードは計り知れない。
しかし、検察は、そんなことはまったく気にもしない「鈍感力」で、捜査を進めるべきだ。
そして、堀江もん事件で関係者がありえないような姿で「自殺」をしたり、緑資源機構の談合捜査で検察職員が「誤って」捜査資料を廃棄したりといったような、国民に「あり得ねー」という疑問を抱かれないように、慎重に捜査してもらいたい。
いずれにせよ、ここまでやっておいて秘書一人の起訴という「手ぶら」では検察もタダでは済まないだろうから、小沢代表の身辺に迫るだけの十分な「ウラ」を押さえて、今回の強制捜査に及んでいることだろう。
だとすれば、小沢代表が記者会見でいくら強気に振舞ってみても、民主党としては「次」を念頭に置いて動き始めているに違いない。
健康に不安のある小沢代表の体では、どのみち総理の激務は無理だっただろうから、いずれにせよポスト小沢の選出はやらなければならない事だった。なので、ある意味、いい機会かもしれない。
今回の一件をバネとして次につなぐ事ができるか、浮き足立って自壊の道をたどることになるのか、それこそ、民主党の政権担当能力が試されているときであることは間違いないだろう。
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