時の記憶

時代の記憶として残したいニュースの勝手な論評です。


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 メインストリームのニュースから少し外れたところにこそ、えてして時代の真実が隠されています…などと、たいそうなことを言うつもりはありません。
 でも、ちょっとしたニュースに何を感じ、何を考えたかを残すことで、自分の人生の軌跡みたいなものを残せないかな~と感じています。
 なので、私小説的な時事論評として読んでいただければと思います。
 もちろん、感想は下の「作者にメール」でお寄せください。
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予習不足で臨んだ鳩山代表の就職面接の結果(党首討論)

2009年05月27日

 党首討論とマスコミから逃げ回っていた小沢代表が代表代行に「降格」され、今度は血統書付きの世襲議員である鳩山代表となってはじめての党首討論が行われた。
 激しいヤジに度々さえぎられるほどの「盛り上がり」を見せた「熱い」党首討論だったが、そのボルテージの高さに比して、議論の内容は、「愛」はあっても「生活力」の伴わないヤサ男のイメージを払拭するものではなかったようだ。

 毎週水曜の昼から行われる英国の党首討論では、議長が「オーダー、オーダー」を連発しなければならないほどの盛り上がりを見せるが、今回の日本の党首討論もそれをほうふつさせるほどの「熱い」雰囲気の中で行われた。
 その理由はもちろん、鳩山代表が就任して初めての党首討論だったからだ。

 その鳩山代表には、45分という短い時間の中で実現すべきことが、少なくとも三つあった。
 まず第一に、「小沢のやとわれマダム」という、軟弱でひ弱な「名ばかり指導者」というイメージを払拭できるか。
 第二に、自民党的利権政治のアンチテーゼとして存在するはずの民主党の代表者が、利権ビジネスの極めつけであるゼネコンから政治資金を受け取りながら、イカサマのような報告をしていたことについて、どう国民の疑念を払拭するのか。
 第三に、政権交替を問う政党としてのビジョンを、自民党政治との対比で国民にわかりやすく提示すること、だ。

 党首討論といいながら首相に対する質問でしかないイギリスのクエスチョン・タイムと違って、日本の場合は実質的にも「討論」であり、政府側の首相にも逆質問権があるし、ましてや「おしゃべり好き」の麻生首相なので、鳩山代表の実質的な持ち時間も少なく、そもそも野党党首に不利な状況だったかもしれない。
 その中で、これら三つのポイントについて、鳩山代表の成果はどうだっただろうか。

 まず、第一について。
 今回の党首討論を見た視聴者の多くは、鳩山代表の「意外にも」毅然とした態度に好感を持ったのではないだろうか。
 「ウリ」だったソフトムードから急に強面に変わるのは無理にしても、これまでのように、政権交代の期待ばかりに浮かれた政治同好会的なイメージから、政権を担う厳しさをやっと理解し始めた党首の顔になりつつあるように見えた。
 ただ、仮に政権交代になった場合に、形式的には部下のプーチンが上司である大統領を顎で使っていると思われているロシアの二重権力構造のようになるのではないか、という疑念については、与野党ともに触れられずじまいだった。

 第二の小沢代表の説明責任については、民主党の劣勢は明らかで、この点に関して民主党の負ったダメージの大きさを、今更のように示す結果となった。
 いち早く企業・団体献金の禁止を盛り込んだ改正法を民主党が提出するので、与党も賛成すべきだと、鳩山代表は言う。
 それに対して、与野党が議論してできた現行法をきちんと守ることの方が先で、民主党の代表ともあろう人が、それすら守らなかったことが今回の事の発端じゃないのかという麻生首相のカウンター・パンチの方が威力があるようだった。

 それに、そんなに民主党が言うなら、自分の党だけででもそれを実行すればいいのではないか。法案を提出するというが、どうせ自民党が反対して成立しないだろうから、自民党のせいにする口実作りのためじゃないのかと、多くの国民は疑問に思っていることでもある。
 なので、選挙戦においても、企業・団体献金の禁止を「画期的なマニフェスト」としてあまり誇らしげに掲げると、かえって自民党のいい「餌食」になるだろう。
 今度の選挙戦での民主党のアキレス腱の一つが小沢問題であり続けることが間違いないことを、再認識させた形となった。

 第三の、民主党政権のビジョンについては、鳩山代表が、今の日本社会が、温かみがなく、絆の崩壊したギスギスした社会になりつつあるという問題提起をし、祖父以来の「友愛」を主張したところまでは、「そのとおりだなー。いいこと言うなー。」という気がしないでもない。
 しかし、友愛社会と言われても、途中で総理を投げ出した人が言っていた「美しい国」と同じくらい雲をつかむような話で、あまりピンとくる話ではない。
「美しい国」に懲りている国民としては、「あー、またか。今度は騙されないぞ。」という気持ちなので、政権ビジョンとしてどれだけ意味のあることかは未知数だろう。
 友愛社会の一例として、どこかの小学校でボランティア教師の活躍によって落ちこぼれ生徒をなくす試みを紹介していたが、政権ビジョンを提示する具体例がボランティアだけでは、ちょっと「なんだかなー。」という印象を多くの人が持っただろう。

「自民党の党首は、党首になること自体が目的で、何をしたいかがまったく見えない」と鳩山代表は言う。
 しかし、次の総理を決めることになるかもしれない民主党の代表選挙を、辞めていく人のゴリ押しでわずか数日間でさっさとやってしまい、政権ビジョンの議論らしいことすらせずに民主党代表になった人が言えた義理ではないだろう。

 今回の党首討論でも、民主党の政権ビジョンについては、唐突に持ち出された感のある「友愛」というキャッチフレーズ以外に見るべきものはなく、政権構想自体が「生煮え」どころか、そもそも存在しているのかどうかさえ怪しいという印象を与えることになってしまった。
 それならば、同じワンフレーズ・ポリティックスにしても、「官から民へ」とか、「国から地方へ」といった小泉時代の方が、まだ内容をイメージできるし、そもそもビジョンも何もなくても開き直っている麻生総理の方が、「潔い」ではないかとさえ思える(笑)。
 この「生煮え」状態が、来るべき政権選択選挙までに解消されるのかどうか、そのためにどのような政策議論が重ねられるのか、筆者も含めて多くの国民が見守っていることだろう。

 総括すると、多くの人が持った印象としては、「ほー、鳩山って意外と骨のあるところもあるんだな。でも、言っていることは相変わらずフワフワしていて、政治同好会だな。」というところだろう。
 なぜ言っていることの「中身」がないかと言えば、アメリカのように、政策議論を戦わせて党内の指名選挙を勝ち残るという訓練を経ずに前線に放り出された新兵だからであって、きちんとした代表選を行わなかったというツケが、今回の党首討論の「生煮え」感となって表れたということだろう。

 限られた時間しか残されていないが、頻繁に党首討論を重ねることで、新兵が熟練兵士になることを期待したいところだ。


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