時の記憶

時代の記憶として残したいニュースの勝手な論評です。


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 メインストリームのニュースから少し外れたところにこそ、えてして時代の真実が隠されています…などと、たいそうなことを言うつもりはありません。
 でも、ちょっとしたニュースに何を感じ、何を考えたかを残すことで、自分の人生の軌跡みたいなものを残せないかな~と感じています。
 なので、私小説的な時事論評として読んでいただければと思います。
 もちろん、感想は下の「作者にメール」でお寄せください。
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政権交代病で劣化した民主党の政策力

2009年05月12日

 麻生総理が、世界一の借金王だと自嘲した故小渕総理も顔色を失うほどの借金で、時間稼ぎのためと揶揄されている経済対策を立て続けに繰り出してきたが、さすがにもう弾がなくなり、そろそろ総選挙かとみるや、織り込み済みの路線どおり、民主党の小沢代表が辞任した。

 新代表の「賞味期限」を最大限保つタイミングでの代表辞任で、これからが、本当に政権を手にすることができるのか本番が始まることになる。
 その意味で、今日、衆議院の予算委員会で「これからの日本社会」というタイトルまで付された審議は、次期代表候補の一人と目されている岡田・副代表が登板するとあって、注目した人も多いだろう。

 ただ、結果だけ言ってしまえば、まったく焦点の定まらない、うわべだけをなぞるような、つまらない質疑だった。
 次に質疑に立った同じ民主党の篠原孝議員が、失言とはいえ、「私の方はもっと内容の濃い質問をさせてもらいます。」みたいなことを言って、場内の失笑を買っていた。
 まるで、総選挙が目前に迫ったこの期に及んでなお政権交代のための「対立軸」を未だに見いだしあぐねているかのように、世襲制、政治と金、経済危機、地球温暖化、さらには核軍縮と、さまになりそうなテーマは並べてみたものの、どれ一つとっても、「あすの日本社会について」というテーマで多くの国民が期待していることは何一つ聞けなかった。
 世襲制がどうだろうと、国民から見れば、国民目線から見た国民生活という視点と、国益や長期的な国家運営という大局思考を兼ね備えた優秀な人材であれば、そんなことはどうだっていいわけで、なにかというと祖父の血筋をひけらかし、街頭演説で「下々のみなさん。」と「つい間違って」言ってしまう上から目線の某首相みたいなのが「世襲」するのが困るだけだろう。(もっとも、民主党の定義でも、某総理は世襲にはあたらないとのことらしいが。)
 政治と金にいたっては、それで党代表が辞めているのだから、説得力がないというのを通り越して、聞いている方が痛々しく感じるほどだ。
 経済危機対策については、危機的な公債残高でも問題にするのかと思えば、「百年に一度」という言い方がけしからんとか、小泉改革といっても、結局は日本は輸出依存体質から抜けきれていなかったので、何も効果がなかったということではないか、といったただの難癖としか思えない代物だ。
 ほとんど打つ手のないようなデフレ経済と需要不足から這い出そうとしていたときに、円安が手伝ったとはいえ、外需が経済を牽引してくれたのは幸運だったというべきだろう。
 たかが数年で強力な内需主導の経済に変わるなどということはあり得ない話だし、だから構造改革などは何もやってこなかったに等しいとでもいいたげな論法は、ちょっと強引過ぎるだろう。

 岡田副代表のふがいなさに比べて、共産党はハウジングプア問題、社民党は地域医療の崩壊にテーマを絞り、それぞれの党がターゲットとする層が最も切迫に感じている問題にきちんと焦点を当てていた。
 その意味で、焦点のぼやけた野党第一党と、小さいが故に存在意義を明確に規定できた小党のコントラストがはっきりした質疑だったと言えよう。

 一時、政権交代がほぼ確実視されたときもあったが、どうも政権交代だけを中心に据えすぎたために、今の民主党は、政策で国民に訴える訴求力と構想力が著しく劣化してしまったように見える。
 問題を大きくし、政府・与党を追い詰めることが至上命題とされるため、国民が望んでいる「解決」を生み出すことが二の次になってしまっているような気がするのは、私だけではないだろう。

 その一つの例が「年金問題」だ。
 5月9日の毎日新聞に、ミスター年金と言われている民主党の長妻昭代議士と、年金記録改ざん調査委員会・委員長の野村修也・中央大教授の討論が掲載されていた。
 長妻代議士は記録の照合のためのもっと金をつぎ込め、それこそが一刻も早い被害者の救済につながると主張している。
 これに対して、野村教授は、そもそも人為的な改ざん行為も組織的に行われていたのだから、いくら紙台帳と照合して合致させても、それが「真実」である保証はない。10年という月日と、2000億円
という膨大な予算がかかることに血道を上げるよりは、目の前の被害者を救済するために費用と労力をかけるべきだと主張する。
 そのためには、救済のルール化を進めて、明確な証拠がなくても一定のルールに合致すれば救済するという発想の転換が必要だという。
 余命も長くはない多くの国民にとって、どちらが本当の意味での「解決」になるかは、議論の余地がないだろう。
 定型化、ルール化による救済は、必要以上に「救済」してしまうケースも出てくるかもしれない。しかし、照合作業に何千億円もかけるよりは、安上がりになる可能性が高い。
 それに、まちがって支給したとしても、遠くない将来、必ず「終わり」が来る。

 民主党のミスター年金と言われ、これと公務員叩きだけで飯を食っている人でさえ、この程度のレベルであって、政策脳はほとんど時間停止したままだ。
 なぜ、野村教授のいうような、真に国民のためになる「解決」をもたらすための発想の転換ができないのかと言えば、それは、年金問題が数少ない「対立軸」だからだ。
 政府与党を追い込むことには長けても、本当の意味での解決をもたらす政策力には欠けているということなのだろう。

 与党を追い込み、政権交代に現実味をもたらした小沢氏の功績は大きいだろう。
 しかし、そのようなアプローチが、民主党の政策力を高めたかといえば、それははなはだ疑問だ。
 年金問題、公務員叩きというわかりやすいテーマで政府・与党を追い込む「追い込み屋」を育て、その活躍の場を与えたことは事実だが、政策力は見る影もなく劣化しているのかもしれない。
 もっとも、その小沢氏が、公権力を持った「追い込み屋」に追い込まれたのは皮肉と言えば皮肉だが。


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