危機に際してのリーダーの資質
2009年02月26日
100年に一度の危機に際して、選挙によって新たに信任を得てスタートしたオバマ大統領。
一方の麻生総理は、この経済危機を幸いとばかり、代り映えのしない景気対策を次々と繰り出し、審判の日を先延ばしにすることだけに腐心していると思われている。
握手する両者の写真を見て、オバマ大統領の笑みが輝いて見えるのに対して、麻生総理のそれが卑屈に見えてしまうのは、麻生総理が完全に国民の信任を失ってしまった、およそ政治的正当性のない「名ばかり総理」だからだろう。
出口が見えないどころか、日々深刻度を深める経済危機に直面して、世界中の人々は、不安が不安をよぶ「怖れのスパイラル」に落ち込んでいる。
真の危機は、そういう際限なく膨れる人々の不安心理そのものなのだろう。
その意味で、76年前にフランクリン・ルーズベルトが言った、「私たちが恐れなければならない唯一のことは、恐れそのものだ」という言葉は、今回の経済危機にあっても思い起こさなければならないものだろう。
災害や事故で人々がパニックに陥っているとき、現場で対策の指揮をとる指導者がまず最初にしなければならないことは、人々を落ち着かせ、パニックに陥って忘れてしまっている大事なのことを思い出させることだ。
その意味で、危機に際して指導者に求められることは、まずもって、優れたコミュニケーターとなることだ。
多民族国家であるアメリカのように、言葉が相互理解の基礎である社会では、特にそれが重要だ。
これに対して、「阿吽の呼吸」とか「腹芸」といった政治文化が支配する日本で育ったリーダーは、この点において、欧米の指導者からは一歩も、二歩も後れを取っている。
それは、「まともな事」すら言えない現職総理や、記者会見でへべれけになる財務大臣、そして、党首討論や国会質問に「後ろ向き」な野党第一党党首を見ればわかる。
国家の重大な局面に際し、リーダー自らが国民に対して直接にメッセージを伝えることの重要性は、今から遡ること半世紀以上も前、麻生総理のお祖父さんも野党党首から指摘されている。
これは、日米安保条約という、その後の日本の進路にとって大きな節目となった条約の締結に際して行われた国会審議であり、きちんとした説明をしないといって批判されているのは、麻生総理のお祖父さんでもある吉田総理、批判しているのは元総理の芦田均である。
現職総理と元総理のやりとりで大変読み応えのある審議録であり、既に広く読まれているが、ここに再掲したい。
野党第一党から質問に立った議員が、こともあろうに予算委員会で総理に対して漢字テストをするとか、国家公務員が深夜タクシーで缶ビールをもらうのが怪しからんと、下らないことに時間を費やす暇があったら、この審議録でも読み返して、今から半世紀以上も前の国会で、与野党のトップが真っ向から向き合って議論していた姿を、よーく思い返していただきたい。
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○芦田委員(自由党)
総理はアメリカに渡って親しく空気を見て来られたのでありますから、その感覚もよほど是正されたろうと思っておった。
にもかかわらず、いろいろ国会の論議を通じて意見を聞いてみると、今でもほんとうに日本の周囲に押し寄せておる危険な状態が十分おなかの中に入っていないのではないかと思われる。
何といったって、今日本の周囲はたいへんな暴風雨です。
その中に立って、政府は目先の行政事務と選挙対策とに忙殺せられていて、平和世界の建設とか、祖国再建の基本的な施策についても、不幸にして理想の片鱗だも示されておりません。
前途に対するヴィジョンに至ってはただの一つもない。…
それだから口さがないともがらは、今の日本には行政があって政治がないなどと言う。…
この千載一遇の機会において、全国民を感激させるような片言隻句も聞くことができなかった。
歴史未曾有の条約審議を前にして、国民は吉田総理大臣の衷心の叫びに耳を傾けようと待望しておるのである。
それにもかかわらず、今日までの政府の説明は、国民大衆に多くの失望を与えたにすぎなかった。…政府は…日本将来のあり方について明確な経綸を内外にお示しになる必要があります。
ところが現状はどうです。
国内には思想的の分裂、経済の混乱、政治的な空白状態、どこを探しても興国の気魄を見出すことができないのが実情でしょう。
この沈滞した空気を打破して民族の自信をとりもどす仕事、これが吉田総理大臣に課せられた任務です。
今回の…政府の態度を見て、我々が遺憾に思うことは、確固たる信念の上に立って民族の運命を切り開こうとする情熱に欠けておるということです。
吉田総理の、理想もしありとすれば、その理想を実現せんとする気魄、それを国民は目撃することを待望しておる。
ところが政府は常に遅疑逡巡している、腰がすわらない。
それがために、うちは国民をして敵帰するところに迷わしめ、外は諸外国の猜疑を招くような結果となる。
いやしくも八千万の民族をして、独立民族たる自覚に奮い立たせようとするならば、政治指導者が毅然たる態度を持って、国民の先頭に旗を振る気魄をお示しになる必要があると思う。
現在わが国が当面する難局を前にして、私は一層その感を深くする次第であります。
(衆議院予算委員会議事録・昭和26年10月18日)
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