時の記憶

時代の記憶として残したいニュースの勝手な論評です。


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 メインストリームのニュースから少し外れたところにこそ、えてして時代の真実が隠されています…などと、たいそうなことを言うつもりはありません。
 でも、ちょっとしたニュースに何を感じ、何を考えたかを残すことで、自分の人生の軌跡みたいなものを残せないかな~と感じています。
 なので、私小説的な時事論評として読んでいただければと思います。
 もちろん、感想は下の「作者にメール」でお寄せください。
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オバマ大統領が麻生総理と握手してはいけない理由

2009年02月25日

 オバマ大統領とにこやかに談笑する間も、支持率が見るも無残に下がり続け、今や、ポスト麻生が公然の関心事になる中、同じ「過ち」を繰り返さないためにも、今一度「総理の品格」について考えてみる必要がある。
 そのためには、麻生総理に何が欠けていたのかをきちんと検証する必要があるが、その際、忘れてならないのは、今は引退された野中氏の麻生批判だろう。

 政治家のwikiは、読み物としてとても面白いものだが、「麻生太郎」のwikiは特に面白い。
 というのも、「政治的主張」や「歴史認識」といった項目は、いかにもありがちでつまらないものだが、「物議を醸した発言」、「漫画」、「漢字の読み間違い」といった、他の政治家のページではあまり見かけない「特色ある」項目が多数立てられている。
 特に、「物議を醸した発言」の項目は、大変充実していて、読み応えがある(笑)。

 それらの中には、公の場で言えば確かに問題はあるものの、「はっきり言って(医師は)社会的常識がかなり欠落している人が多い」と、誰もが思っていて口にできないことを明快に言ってくれて、思わず拍手をしたくなるものや、街頭演説の開口一番、「下々の皆さん」と呼びかけるなど、率直な物言いで「育ちの良さ」を感じさせるものなどがあって興味深い。

 また、「漢字の読み間違い」にしても、麻生総理の間違いで初めて正しい読み方を憶えた国民も多かっただろうし、「麻生総理のように恥ずかしい思いをしないためにも、漢字を勉強しておこう」と、漢字教育の推進に一役買ったという積極的な面もある。

 しかし、野中氏が痛烈に批判した差別発言だけは、そんな「微笑ましいもの」として片付けることができないものだし、この一点を持って麻生氏は日本国民の指導者となってはいけない人だったと思う。
 もろちん、アメリカのような人種問題がある国では、この一点で大統領の指名候補にすら残れなかっただろう。
 そんな人を、間接的ではあるにせよ、首相にしてしまったこの国の一員として、とても恥ずかしく思う。

 この、野中氏の麻生批判は、新聞などでも既に報道されているが、2003年9月11日の自民党総務会で、当時、政調会長をしていた麻生氏がいる前で行われたものだ。
 魚住昭『野中広務 差別と権力』でその模様が描かれているが、それによると、麻生氏が派閥の会合で「野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と言ったことについて、「君のような人間がわが政党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんかできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」と批判したところ、「麻生は何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだった。」とのことである。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E4%B8%AD%E5%BA%83%E5%8B%99#.E9.BA.BB.E7.94.9F.E5.A4.AA.E9.83.8E.E3.81.B8.E3.81.AE.E6.89.B9.E5.88.A4)

 最終的な事の真偽は、外野にある者には知るすべもないが、あの野中氏が、麻生氏の個人攻撃を、それも自民党の幹部が居並ぶ総務会でするのだから、相当の「ウラ」をとった上で行っているのだろうし、事実、麻生氏側からは、野中氏の批判を事実無根と思わせるだけのきちんとした反論もなされていないようだ。

 黒人差別を乗り越えて大統領を送り出す国と、派閥の会合とはいえ、部落差別を当然のことのように口にする総理…。
 これは、総理の品格という以前の問題だし、そんな人が日本を代表して、オバマ大統領と握手しているのを見ると、日本国民として恥ずかしさに身が縮む思いをする。
 このような「欠格者」であっても適当な派閥力学の間隙をぬって総理にまでなってしまうというのは、日本政治の致命的欠陥だと思う。

 大臣任命に先立って、警察組織をフルに活用した「身体検査」が恒例になったが、そこでは、政治資金関係や、女性関係などは血眼になってチェックされても、平気で部落差別発言を口にするといったことはノーチェックだ。
 しかし、総理としての「欠格事由」としては、むしろこちらの方が重大だし、そのためには公安警察の情報網などは必要ない。
 にもかかわらず、それがきちんとチェックされないのは、政権与党の中の、次の選挙のことしか頭にない視野狭窄の人たちの間だけで、テキトーに総理が生み出されてしまうという政治過程の問題なのだろう。
 そして、その点だけについてみれば、今の与党も野党も、大した違いはない。

 麻生総理が総理の器でないと、いまさら自明のことをあえて繰り返す必要もないだろう。
 問題にすべきは、このような「欠格者」であっても、簡単に総理になってしまい、史上初の黒人大統領と、日本を代表して握手してしまう、日本の政治システムの危うさであって、この問題をきちんと補修しなければ、これからも似たようなことが起きてしまうことだろう。
 それが、祖父譲りの、言葉の端々から滲みだす「上から目線」であれば、まだ実害は少ないが、この野中氏の麻生批判に見られるような問題であれば、そのような者をリーダーにする日本の価値観そのものを問われることになる。

 オバマ大統領が体現する価値観と、麻生総理が体現する価値観の落差を思うとき、なぜ、こんな人を総理にしてしまったのか、こんな人さえ総理にしてしまう政党がなぜ与党なのかということを、日本人として今一度自省しなければならないと思う。


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