時の記憶

時代の記憶として残したいニュースの勝手な論評です。


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 メインストリームのニュースから少し外れたところにこそ、えてして時代の真実が隠されています…などと、たいそうなことを言うつもりはありません。
 でも、ちょっとしたニュースに何を感じ、何を考えたかを残すことで、自分の人生の軌跡みたいなものを残せないかな~と感じています。
 なので、私小説的な時事論評として読んでいただければと思います。
 もちろん、感想は下の「作者にメール」でお寄せください。
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「変革」という偽装レッテルを貼った保護主義の亡霊

2009年02月02日

 オバマ新大統領に続けとばかり、チェンジ!を合言葉に掲げる政治家が増えたと思ったら、政府の審議会で構造改革の旗を振りまくっていた経済学者も「転向」したらしい。
 責任はないが発言権だけはある「有識者」が、構造改革といっては本を売り、今度はそれが間違っていたといっては本を売る陰で、そんな気まぐれに翻弄される人たちの苦労は、出口さえも見えない。

「今年の終わりか、来年の第1四半期あたりで経済が曲がり角を迎えると思っているのなら、はっきり言おう。我々は曲がり角を曲がってもいないし、曲がり角など見えもしないし、どこに曲がり角があるのかさえわからないのだ。」
 今年のダボス会議に出席した誰かのコメントとして、BBCが伝える、嘆きとも諦めともつかないこの言葉には妙に説得力がある。(http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/davos/7863684.stm)

 世界の超有力者と賢人が一堂に会するそのダボス会議でも、話し合われたのは世界が直面する危機がいかにひどいかということばかりで、解決策どころではなかったらしい。
 世界の超有力者や賢人でさえも思考停止してしまうほどひどい経済危機なので、「それほどでもない」経済学者が「転向」しても、あながち責めることはできないのかもしれない。

 ただ、あまりのひどさに人々が「思考停止」してしまった空白状態を利用して、「変革」という偽りのパッケージで「先祖がえり」をもくろもうとする人たちが跳梁跋扈しそうな雰囲気には、もっと危機感を持つべきだと思う。

 なにもアメリカの大統領に言われなくても、「チェンジ」は常に必要なことに違いない。
 しかし、大事なことは、何をチェンジし何をチェンジしないのか、チェンジといっても、何をどうチェンジするのか、ということをきちんと見極めなければ、せっかく営々と積み重ねてきた先人たちの努力を無にする「賽の河原積み」の不毛さに陥ってしまうということだ。

 そういう眼で「変革」を主張している人たちの主張を見てみると、首を傾げたくなるものも多い。
 先の山形知事選で当選した女性知事も選挙期間中は「チェンジ」と書かれたたすきをかけていたが、その公約の中身と言えば、前知事が進めた財政再建に反対し、公共事業や農林水産事業費をはじめとした大幅な財政出動だという。
 これは、正確には、「チェンジ!」ではなく、「前の知事が始めた財政再建というチェンジの取消し!」と書くべきであろう。
 それ自体は、決して変革でもなんでもなく、「昔のように公共事業で潤いたい」という人たちにおもねているだけだろう。

 アメリカでも、景気刺激策として行う公共投資で使用する「鉄」はアメリカ製でなければならないというバイ・アメリカン条項が盛り込まれようとしているという。
 これ以外にも、連邦職員の制服はアメリカ製でなければならないとか、手を変え品を変えた「バイ・アメリカン」が多数検討されているらしい。

 英エコノミスト誌の記事が指摘するように、1929年の大恐慌時に、スムート・ホーレイ法がアメリカの関税を史上最高の水準に引き上げたことが、各国の報復関税を招き、世界貿易が崩壊した。
 今回のアメリカ発のサブプライム不況でも、「背に腹は代えられない」とばかりにアメリカが保護主義に走れば、報復が報復を呼ぶ貿易戦争になるという愚かな歴史を繰り返すことになるかもしれない。
 そうなれば、経済恐慌もアメリカ発、貿易戦争もアメリカ発となる。
 ペルシア湾で大量破壊兵器という亡霊と戦ったリアルの戦争もアメリカ発なので、これでグランドスラム達成というところだ。

 今度は、さすがにリアルの戦争という事態はないとしても、保護主義によって世界貿易が停滞すれば、それだけ世界同時不況が長引くことにもなるだろう。
 ガット事務局だったときの方がはるかに成果を上げ、国際機関になった途端に安心してしまったのか、見るべき成果を何一つ上げられないWTOが、世界経済にとって本当に必要な組織なのかどうかが試されている。

 物事はおうおうにして行き過ぎるので、「修正」は必要だろう。
 民間の力を引き出すという市場主義も、行き過ぎればもちろん修正したり、見直ししたりすることは必要だろう。
 でも、そういう行き過ぎの是正とか修正といったものは、それ自体、決して変革ではない。
 むしろ、大本の変革の進め方の知恵だ。
 カーブの前でブレーキを踏んだり、霧で先が見えなくなったら速度を落とすようなものだ。

 だから、問題に直面したからといって、すぐに「資本主義の宿命だ」とか「市場主義の終焉」などといって、大本の変革までスクラップしようとするのは、霧の中で「使い物にならない」と言って、車自体を捨てるようなものだ。

 山形県知事やアメリカ議会の一部の保護主義者が口にする「変革」はかなり眉唾としても、オバマ大統領の「変革」には多くの人が「本物」を感じてきた。
 それは、黒人の大統領などという「あり得ない」ものを現実のものにしたからだし、ブッシュ時代にアメリカを覆った基本思想、つまり、目的のためなら手段を選ばず嘘の報告でもなんでもするし、世の中には善悪の二色しかなく、すべてのテロリストは拳骨で粉砕するんだというカウボーイ思想そのものが変わらなければいけないと、みんなが強く思ったからだろう。

 人々が望んだそういう「変革」に便乗し、変革とは似ても似つかない過去の亡霊までもが「変革」のレッテルを表示するのは、悪質な「偽装表示」だろう。


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