時の記憶

時代の記憶として残したいニュースの勝手な論評です。


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 メインストリームのニュースから少し外れたところにこそ、えてして時代の真実が隠されています…などと、たいそうなことを言うつもりはありません。
 でも、ちょっとしたニュースに何を感じ、何を考えたかを残すことで、自分の人生の軌跡みたいなものを残せないかな~と感じています。
 なので、私小説的な時事論評として読んでいただければと思います。
 もちろん、感想は下の「作者にメール」でお寄せください。
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人民日報が「さりげなく」報道するダライラマの過去

2009年01月11日

 中国のインターネット検索は中国共産党によって「有害」な情報がフィルタリングされていて、特定のキーワードでは検索できなくなっている。

 そんなキーワードの一つが「ダライ・ラマ14世」だ。
ところが、人民日報のサイトだと、しっかり検索できるところが、いかにも中国共産党だ。

 そうやって人民日報の記事を検索すると、なかなか興味深い記事がひっかかった。
 そのタイトルも「真相:ナチスやオウム真理教とダライとの関係」という、週刊新潮とか週間文春みたいに、思わず手にとりたくなるくらいイケてるのは、改革開放の成果だろうか。

 昨年のクリスマスの日付で出されたこの記事のポイントは、要はダライラマは、ナチスの党員だったハインリッヒ・ハラーと、オウム真理教の教祖・麻原彰晃と懇意だったということだ。

 そもそもハインリッヒ・ハラーとナチスの関係は、この記事自体が書いているように1997年に話題になった話だし、ダライラマとオウム真理教の関係がマスコミ・ネタになったのも1995年だったから、「何をいまさら」というのが、この記事を読んだ多くの人の感想だろうが、この時期にこの記事を掲載するのには、もちろん人民日報なりの理由がある。
 それは、おそらく、北京オリンピックの前に国際世論の圧力に屈して始めた、ダライラマの私的代理人との「対話」をそろそろやめちまおう、そのために「いっちょうネガティヴ・キャンペーンでもやるか」ということなのだろう。

 まあ、人民日報の動機が「純粋」なものであるはずもないが、書かれている内容はよく知られていることであり、こうやって読み直すと、ダライラマという人も、いかにも脇の甘い人なのだなと思ってしまう。

 ハラーの方は、どうやらお兄さんの紹介で少年時代に知り合ったようなので、まあ仕方ない面もあるが、オウム真理教が宗教法人の申請をするときに東京都に対してベタほめの推薦状を書くというのは、「生まれ代わりテスト」で先代ダライラマの生前の持ち物を正確に言い当てることができた人としては、もうちょっと「詰め」をしっかりしてほしい気がする。

 もっとも、CIAからも多額の資金援助を受けていたくらいなので、チベット独立のためであれば、オウム真理教から資金援助の見返りに推薦状を書くことくらい、大したことではないのかもしれない。
 それに、アジアの政治文化の「伝統」を受け継ぐダライラマも、チベット亡命政府内では身内を重用するという批判もよくなされている。もっとも、人民日報のこの記事がその点を指摘しないのは、人様のことを言えた義理じゃないくらいに中国政府の方が酷いからなのかもしれない(笑)。

 いずれにせよ、人民日報からチクられるような問題があることは事実だろうが、だからといって中国の外では誰も中国政府の肩を持たないのは、人民日報のこの記事が書いているようなことがとるに足らないことに見えるほど、中国共産党がチベットに行ってきた残虐行為が目に余るものだったからだ。(添付動画を参考)
 そして、その度に中国政府は「それは内政問題であり、そんなことをとやかく言うのは内政干渉だ」と言う。
 罪もない多くの人が権力の手で虐殺されているのに、内政問題もクソもないだろうと多くの人は思うのだが、自国民の虐殺なら他でいくらでもやってるではないか、なぜことさらに中国だけを取り上げるのか、ということなのだろうか。

 問題なのは、こういうことが、マスメディアがコントロールされている中国国内では報道されず、また、冒頭に述べたようにインターネット検索ですらひっかからない。
 西側諸国では、政府の介入に対して徹底的に戦うと威勢のいいグーグルでさえ、最も報道の自由が必要な中国国内では共産党政府に尻尾を振ってフィルタリングに協力している。
 独禁法違反以外では介入のしようがない自由主義諸国で偉そうなことを言うくせに、政府の介入が最もありそうな中国ではとたんに腰砕けになってみせたことで、「言論の自由」の守り神としてのグーグルのメッキが一気にはげてしまった。

 となると、報道・言論の自由を守ってくれるのはやっぱり新聞か、と思うと、これも怪しい。
 人権問題の旗手を自認する朝日新聞が、ことチベットに関する限り、中国共産党政府寄りの「傾向報道」を行ってきたことは有名だ。
 最近では、チベット問題に対する世界的な世論の高まりもあって、少しは報道する姿勢を示さざるを得なくなっているが、以前は「50年以上も前の南京大虐殺とか従軍慰安婦問題をあれだけ報道するなら、今も行われているチベットの弾圧についてもう少し報道したらどうだ」と、自分よりも何段もレベルの低い週刊新潮に「批判」されるくらい、目に余るものだった。

 朝日新聞のこの姿勢も、結局は中国でカネ儲けすることを優先したグーグルと似たような事情だ。
 文化大革命時の厳しい報道・言論規制の中で、朝日新聞だけが中国特派員を置くことができたが、そのときの朝日新聞の説明は、「日本から記者を送ることに意味があるのであり、国外追放になるようなことはあえて書く必要がない。」ということだったらしい。
 民主主義国家の日本の権力に対してはすぐ毛を逆立てるくせに、一党独裁の中国共産党政府に対して、なぜこうも理解があるのか、世界にも類のない新聞休刊日を甘受しなければならない国民としては理解に苦しむが、いずれにせよ朝日新聞のこういうものわかりのいい姿勢のおかげで、当時の朝日新聞を読んだ人は「おー、文化大革命というのは素晴らしいことなんだなー。さすが、毛沢東というのは偉いんだ」と思っただろうし、特派員を置くことに意義があるといっておきながら、歴史に残る一大事だった林彪事件について報道しそこない、中国政府直轄の報道機関である新華社が報道したのを見て慌てて報道するくらいだから、「中国政府の意に沿わないことは書かない」と魂を売ってまで何のために特派員を置いていたのかわからない。

 それにグーグルと同じく、最も疑ってかからなければならない中国政府の発表に関して、「中国政府の意向に沿わない記事は書かない」ということを社長が座談会の席上で公言する新聞社というのは、いったい何なのかと思ってしまう。
 「ひょっとすると、他にも意に沿わない記事は書かない対象があるんじゃないですか」、と疑りたくなるのは、私だけではないだろう。

 自他とも認める政党機関紙である人民日報が偏向しているのは「理解」できるので、読む方はそれを前提に「楽しむ」ことができる。
 でも、二言目には「報道の自由、言論の自由」を寝言のように主張する新聞や検索エンジンが、中国政府に嬉々として魂を売る様を見るのは、なんとも情けなく、やるせない。
 人民日報のこの記事は、そういう報道機関や検索エンジンの使命について考えさせる、いい機会だと思う。

人民解放軍の狙撃手によって次々に射殺されるチベットの人【動画】


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