ひっそりと退場する「場違い」な大統領
2007年03月12日
ある意味で、もっともフランスらしいフランス大統領だった。
東大法学部が幼稚園に見えてしまうほどの超エリート養成所のENAを出て、若い頃からメキメキ頭角を現した。
フランス人は、彼を「でかい奴」と呼ぶが、もちろんその図体と態度のことだけではない。BBC報道によれば、その目を見張るばかりの旺盛な食欲と、色とりどりの女性との「噂」、そして本人の中ではそれらと一向に矛盾しない家族への愛情、そして生の相撲が見たくなったら日本の総理と首脳会談をセットさせる相撲好き。そのどれをとっても、フランスらしいフランス大統領だった。
そのちょっと前に包括的核実験禁止条約に自らサインしておきながら、南太平洋のムルロア環礁での核実験を命じたのも彼だし、長く勤めたパリ市長のときは、パリ市の公金を自分が作った政党の活動資金に使っているのではないかとか、という法廷も認める「疑惑」もあった。
それどころか豪勢な家族旅行や自分の食料費にまで充てているのではないかとメディアから指摘されている。たしかに、20億円もの食料費は、いくら巨大なシラクの食欲でも説明できないかもしれない。
まあ、この程度の批判には、「大統領を裁判所ごときが呼び出すのは失礼だ。」という本人の「鈍感力」と、上手に二枚舌を使い分けている分には非難するより感心するフランス人の物分りのよさもあって、2002年には、だらしない社会党に助けられたこともあり、第二ラウンドの一対一対決では、極右のル・パンを「圧倒的な支持」で破って再選されている。これを支持と呼ぶのであれば、だが。だらしない野党第一党がいいかげんな与党を救う構図は、万国共通らしい。
いずれにせよ、今の雰囲気は、「もう終わってる人」であり、一昨年のパリ郊外の暴動に見られるような社会不安のときにも、その直後にテレビの前に現れ国民にメッセージを出すということすらできず、「場違いな大統領」と言っている人もいた(メディアに現れたのはほとぼりが冷めてからだった)。
若い頃から、とにかく早く大統領のポストが欲しくてしかたがないエリートだったが、いざ手に入れるとそれで満足してしまったということなのだろう。
それに比べれば、総理に就任してからの方が「体が壊れるくらい」大変な昨今の日本の方がはるかにエキサイティングなんじゃないだろうか。
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| ■シラク仏大統領、引退を表明=「別のやり方で国民に尽くす」 (時事通信社 - 03月12日) |
【パリ11日時事】フランスのシラク大統領(74)は11日夜(日本時間12日未明)、テレビとラジオを通じ国民向けに演説した。この中で、「わたしは新たな任期を求めない」とし、今春の大統領選挙に立候補せず、2期12年の任期が終わる5月に政界を引退する意向を表明した。注目された与党・国民運動連合(UMP)の候補であるサルコジ総裁(内相)への支持表明はなかった。
演説でシラク大統領は、「皆さんに託された任期を終えるに当たり、別のやり方で国民に尽くす時期が近くやってくる」と述べた。
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