永田町攻防戦-これからの三つの見どころ
2009年09月24日
「選挙が終われば、次は選挙だ。」と言われる。
それくらい、議員として生き残ることは厳しいが、事情は政党にとっても同じだ。
衆議院総選挙で地滑り的大勝利を収めた民主党も、解党的危機を迎えた自民党も、次の選挙である参議院選挙に向けた戦略を練っていることだろう。
一票の力に目覚めた国民は、これからの政治攻防戦をどのように観戦すべきだろうか。
来年の参議院選挙に向けての攻防戦の主戦場は、
①秋の臨時国会
②年明けの通常国会での予算審議
だ。
①は前哨戦で、②が本番ということになるが、そこでの「正攻法」の戦いの他に、継続的なゲリラ戦が行われることだろう。
では、それぞれの戦いはどのように行われるのだろうか。
三党連立政権は、100日のハネムーンどころから、政権に就いて一週間そこらでもうすきま風が吹き始めているし、世間の冷たい向かい風が吹き始めた。
国民人気の「半減期」がどんどん短くなっているのは世界的潮流のようで、オバマ大統領の人気も最近は低下が顕著だ。
この現象は、買物心理と似ているところがある。
たまらなく欲しいと思い、大枚をはたいて買ってみたはいいが、いざ商品が届くと、買う前の熱は既に冷め、いろいろと使い勝手の悪さばかりが目につく。
「どうしてもっとよく、事前に考えて買わなかったのだろう。」と自分を責めても後の祭りだ。
通信販売ならクーリング・オフで返品ができるが、「政権」はなかなか返品に応じてくれない。
最悪、耐用年数の4年間は使い続けなければならないかもしれない…。
自民党が想定する戦略は、国民のこの「買物心理」を突くことだろう。
「あなた方が血が上った頭で買ってしまった『商品』は、実はこういうものだったんですよ。
今なら、来年の参議院選挙までクーリング・オフ期間なので、間に合いますよ。」
ということだ。
では、自民党は、そのメッセージをどのようにして国民に伝えようとするのだろうか。
まず、①の戦いでは、政権交代をもたらしたマニフェストの「正体」を暴くことになるだろう。
勝つためなら公約の中身を問わない、自民党・田中派的な政治マキャベリズムの粋とも言える民主党マニフェストは、突っ込みどころ満載だ。
しかも、「国民との約束だ」と言って、それをかたくなに守ろうとする「けなげさ」がかえってあだとなって、そのような突っ込みに対してもろさを曝け出すだろう。
政策自体の突っ込みなら予算編成を待たずにできるし、それを契機にスキだらけの連立に楔を打つこともできるだろう。
どのような「突っ込み」が考えられるか。
まずは、政策相互の矛盾だ。
国連総会で鳩山総理がかっこよくCO2の25%削減を打ち出したはいいが、高速道路の無料化といった政策は、これとどう整合するのか。
世帯の可処分所得を増やして生活再建を図るというが、このCO2削減をはじめ、世帯の負担増が不可避な政策ばかりが並んでいるが、これは空手形ではないのか。
高齢者パワーに迎合して後期高齢者医療制度の廃止をブチ上げたはいいが、現役世代の健保制度が崩壊の瀬戸際に瀕しているのを、どうするつもりなのか。
このように、もうすでに度々指摘されたことについて、民主党は秋の臨時国会で政権与党としてきちんと説明できるのだろうか。
次には、受益と負担の不公平さだろう。
高速道路を使わない国民の税金まで、どうして「無料化」のために使われるのか。
民主党は、高速道路を使わない国民も「間接的」に高速道路の恩恵を受けているという。じゃあ、実際に高速道路を走っているマイカー族の「直接の便益」はいったい誰が負担しているのか。
その直接の便益は少なくともマイカー族に払わせるべきではないのか、ということには答えようとしない。
あるいは、庶民の配偶者控除や扶養控除を切り捨てて、所得制限のない子供手当に充てるという。
所得の低い専業主婦世帯の負担で、所得の多い共働き世帯に「厚い」手当が支給されることになることの社会的不公平感を、どう説明するのだろうか。
受益と負担の不均衡は、国民の不公平感を強く刺激する。
自民党が、国民にわかりやすい形でこのような社会的不公平を、具体例を示しながら問うとき、あくまでそれは「例外的なケースだ」という民主党の説明に国民は納得するだろうか。
経済と雇用が低迷を続けることで国民の我慢力はかつてないほど低下しており、そのような「たかり」と不公平を笑って受け容れる余裕は、今の国民にはないだろう。
そして、掲げる政策の「お子ちゃま性」だ。
東アジア共同体を胡錦濤・国家主席との首脳会談で提案したというが、いったいその「共同体」なるものは何なのか。
東アジアがどこまでを指しているのかはわからないが、仮に中国、台湾、韓国、北朝鮮、日本、ロシアということなれば、そのうち二か国は民主国家ではない。
しかも、韓国と日本が北朝鮮から国家の安全を脅かされている中で、中国とロシアは国連の安全保障理事会ですらいつも足を引っ張っている。
鳩山総理は「友愛」を旨とする外交を展開するという。
しかし、真の友愛は、個人の自由と民主主義を求める人民に対して向けられるべきであって、それを抑圧する国家指導者に対して向けられるべきではないだろう。
また、国家の利益を守るという、国家指導者の最も重要な責務をきちんと果たすのだろうか。
今度の地球環境サミットでも、オバマ大統領はすべての国の義務を説き、胡錦濤・国家主席は先進国の義務を主張した。
その一方で、鳩山総理は「友愛」を掲げ、国内での十分な詰めをすることなく25%削減を国際公約にしてしまって、「言ったからには守らないとね。」と言う。
日本の安全保障になんのコミットメントもないどろこか、むしろ危うくする可能性すらある一党独裁国家のボスには共同体を提案し、日本の安全を保障する条約上の義務を負うアメリカには「対等な関係」による「見直し」を主張する…。
これが、日本の長期的な国益にどのように資するものなのか、きちんとした説明を聞きたいと思っている国民は多い。
いずれにせよ、今回の国民の「買物」は、もう一方の「商品」がひどすぎるので、あまりよく考えずに衝動買いしたようなものだ。
そこをきちんと問いただし、国民のクーリングオフの権利を来年の参議院選挙で行使するよう、その説得の端緒を開くというのが、自民党の臨時国会での基本戦略になるだろう。
次に、②の来年の通常国会での戦いは、民主党の「初期成果」を問う戦いがメインになるだろう。
それによって、そもそもいい加減なマニフェストで約束したことすら、まともに実現できない「口先政党」だと印象付けた上で、この同好会政権がきちんとした経済運営や外交ができないために、経済はボロボロ、国際的な信用はガタ落ちとなり、「このまま好きなようにさせると大変なことになりますよ。」という気持ちに国民をさせるというのが、自民党の基本戦略だろう。
したがって、政府予算案で主要公約をきちんと実現できたか、それを事業や政策の見直しで生み出した財源できちんと手当てし、よもや国債増発というイカサマを使っていないか、ということが最大のポイントになるだろう。
他には、来年1月で切れるインド洋での移動ガソリンスタンドを本当に辞めるのか、その代替措置は何か。よもや、「看板の付替え」だけのような手を使うことはないか、なども注目のまとだし、政権移行でストップされた予算執行などで年末から年明け以降の経済や雇用がどうなっているのかで、政界天気図は大きく変わることだろう。
最後のゲリラ戦は、いうまでもなくネガティヴ・キャンペーンだ。
今度の選挙戦でとった自民党のネガティヴ・キャンペーンは、政権与党の良識と見識を疑わせるような「ワルノリ」と思われてしまって、まったく逆効果だった。
しかし、政治の質はそれを担う人の質で決まる以上、偽りの仮面をはぎ、真の人物像をあぶりだすことは野党の重要な仕事だ。
その点、連立政権を担う人たちの中には、秘書給与疑惑で有罪判決をくらった人や、労働運動で甘い汁を吸ってきた人などスキの多い人がウヨウヨいる。
厚生労働省の女性局長逮捕事件で名前がチラホラ取り沙汰された民主党幹部もいる。
そもそも、代表や幹事長の献金疑惑が現在進行形だ。
「野党の隠れ蓑」から引きずり出して、政権を担う人たちの中に紛れ込んだ人たちの「不都合な真実」を明らかにすることが、ゲリラ戦の主目的だ。
もちろん、このゲリラ戦には民主党も徹底抗戦するだろう。
材料は、自・公政権のウミを洗いざらい国民にぶちまけることだ。
長妻・厚労大臣は、職員訓示で「年末までにたまったウミを出してもらいたい」と言ったという。
長期政権のウミを出すのになぜそんなにショートノーティスなのか不思議に思った人もいるだろうが、要は年明けの国会論戦に備えた「タマ込め」ということなのだろう。
これら、三つの戦いを通じて、自民党は「よく考えもしないで買ってしまった民主党という商品はこんな欠陥商品で、早いことクーリングオフしないと、日本は大変なことになってしまいますよ。」と主張するのだろう。
これに対して民主党は、皆さんが今まで自民党という欠陥商品を使い続けていたために、こんなにとんでもないことになっていたんですよ。民主党を買っていただいて、ほんとによかったですよ。」と言って、クーリングオフの必要がないことを国民に説得するのだろう。
この戦いに勝つためには、民主党は、国債増発なき公約実現と経済・雇用の安定という実績を作ることが不可欠だ。
一方の自民党は、これまでのような国民に愛想をつかされた欠陥商品ではなく、新製品として蘇り、民主党との「製品比較」で勝つことだろう。
国民がクーリング・オフをしたくとも、代わりの商品が見当たらなければとりあえず今ある商品を我慢して使うしかないからだ。
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