時の記憶

時代の記憶として残したいニュースの勝手な論評です。


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 メインストリームのニュースから少し外れたところにこそ、えてして時代の真実が隠されています…などと、たいそうなことを言うつもりはありません。
 でも、ちょっとしたニュースに何を感じ、何を考えたかを残すことで、自分の人生の軌跡みたいなものを残せないかな~と感じています。
 なので、私小説的な時事論評として読んでいただければと思います。
 もちろん、感想は下の「作者にメール」でお寄せください。
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本当にぼったくっているのは誰なのか

2009年07月23日

 「まるでぼったくりバーと同じじゃないか。」と大阪府の橋下知事が息まいた直轄工事負担金。
 国民全体の税金を使う以上、利益を受ける地域も応分の負担をすべきだという責任主義を安易に放棄する一方で、国の金で高速道路を作れ、国道を作れと大合唱している。
 選挙を前にして、今年4月に決定された高速道路建設の追加に続いて、今度は「作る意味がない」として凍結されていた国道が一挙18路線も凍結解除された。
 真の「ぼったくりの構図」は、こういう「たかり体質」に染まった地方に、国民がぼったくられているということではないだろうか。

 今年四月、東京外環道路の建設にゴーサインが出たのに新名神高速道路の凍結が解除されないことに対して、大阪の橋下知事は、「不公平だ」と訴えた。
 同様に凍結された高速道路の区間を抱える知事たちの復活要求は、日に日に激しさを増している。
 その運動には、自民党議員はともかく、民主党議員も大いに加勢しているという。
 
 どうして高速道路を作れという大合唱が起きるかといえば、高速道路が地元負担なしで国丸抱えで作ってもらえる「オイシイ」事業だからだ。
 高速道路ができて便利になることで開発の可能性が出てきて地価が上がる上に、工事や用地補償などで地元に大金が落ちる。
 こういうことが、自分の懐は痛めずに、国民全体にツケ回しできるのだから、こんなにおいしいことはない。
 そのうえ、民主党のマニフェストどおり高速道路の無料化が実現すれば、通行料さえ払わずに済むわけで、地元にとってみればありがたいことこの上ない。

 このような「ツケ回し」を要求する知事たちの声は、道路予算を牛耳る自民党の道路族議員、そして道路官僚の強い後ろ盾になっている。
 道路特定財源は一般財源化されたが、地方経済が疲弊する中で、道路予算の「ぼったくり合戦」は激しさを増し、むしろ道路に流れる税金の歯止めがなくなりつつある。
 道路特定財源を残し、「道路に金を使うのはこの範囲までだよ」と歯止めの役割を担わせた方がよかったと言う識者まで現れる始末だ(小川明雄「一般財源化の嘘」-世界2009.08)。

 直轄負担金の廃止を主張する橋下知事は、霞が関・対・地方という構図に当てはめて、あたかも霞が関の役人相手に戦っているかのような「フリ」をしている。
 しかし、実のところ、橋下知事が戦っている先は、決して霞が関などではない。国民全体の税金なのだ。
 橋下知事が主張していることは、要するに、「大阪府を走る国道をぜんぶ国民全体の税金で作ってくれ。俺たち地元は一銭も出さない。」ということだ。

 永田町や霞が関の道路族ファミリーは、地方のタカリを求める声を、国民全体の税金から道路予算をぼったくる際の圧力として使うだろう。
 地方の負担がなくなれば、地方にとって公共事業のうまみはもっと増す。
 そうすれば、公共事業予算を増やせという声はますます強くなり、国レベルでのぼったくり合戦のときに有利に働くというわけだ。
 要するに高速道路と同じ「おいしい構造」を、他の公共事業でも実現させようということにほかならない。
 橋下知事は、霞が関の役人相手に戦っているどころか、彼らが国民全体の税金から道路予算をさらにぼったくることにせっせと加勢しているだけなのだ。

 無駄をさせないもっとも効果的な仕組みは、無駄をさせた人間が痛みを感じるようにすることだ。
 自らが痛みを負うならば、その支出が本当に必要なものか、支出に見合ったメリットがあるのか、当事者の視点で判断をするだろう。
 無駄な道路建設が後を絶たないのは、無駄な道路を国に作らせても、その痛みが国民全体に「拡散」されてしまって、無駄をさせた地方は大して痛くないからだ。
 例えば、通行料収入で管理費すら賄えない本州四国連絡道路を三本も作らせた上に、最後にはにっちもさっちもいかなくなって、結局は借金の大半を国民全体の税金で面倒を見るはめになった。
 似たようなことが日本中で行われた結果、高速道路だけで40兆円を超える借金が積み上がってしまったのだ。
 みんなで背負えば恐くないとばかり、「一部」の人たちが「全体」に背負わせるという無責任な仕組みを放置する限り、こういう無駄の構造はなくならない。

 請求書の明細がないのどうのというのは、やり方の問題に過ぎない。
 必要ならいくらでも改めればよいことだし、大して難しいことでもない。
 そういうやり方の問題を、「責任を分担し合う」という基本思想の問題とすり替えて責任まで放棄しようとするのは、ただのタカリ体質だ。

 近く発表される民主党のマニフェストでは、直轄負担金の廃止が盛り込まれるという。
 政権がほしいあまりに、何の責任も求めることをせず、甘やかすだけ甘やかすという政治のあり方は、彼らが打破しようとしている自民党政治のそれと、いったいどれだけ違うというのだろうか。

 国と地方で800兆円を超える借金。これからの日本の長期的な活力をそぐ、もっとも大きな要因になると心配されている。
 人口が減り、しかも高齢化が進む一方で、国の借金は増える一方だ。減らすためのきっかけすら見いだせていない。
 この借金の縮減にどう道筋をつけるかは、現世代の後世代に対する最大の責任の一つだ。
 その「責任」を放棄する派手な言動が人気の源泉となる政治文化が、今の日本の民主政治のレベルだということだろう。


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