いまだ後進国の域を出ない「口きき」政治の蔓延
2009年06月16日
「働く女性の星」のはずだった厚生労働省の女性キャリア局長が大阪地検に逮捕された。
この事件から浮かび上がってくるのは、議員の「怖さ」を背景に役所に圧力を掛ける「口きき」文化が、行政の隅々に蔓延しているということだ。
これまでは政権与党の議員が中心だっただろうが、政権交替が現実化すれば、与野党を問わず議員であれば「影響力」を行使することができるようになってしまうだろう。
この件に関して、これだけ議員秘書の暗躍が取り沙汰されているのに、新聞も「関係議員の事務所では…」とか名前を出そうとしない。
政権交代を目前にした党の要職者の名前を軽々に出すと、またぞろ、小沢・元代表の秘書逮捕のときのように、政治動機に基づくものだと批判されることを恐れているのだろうか。
日本が議会政治のお手本としているイギリスでは、新聞がすっぱ抜いた下院議員の住宅手当の不正請求に対し、それほど大した額でもないのに有権者の激しい怒りを買っている。
なのに、日本では、国・地方を問わず蔓延している議員の口ききに対し、新聞も大して関心を見せず、もちろん議員自ら浄化しようともせず、「口きき政治」のパンデミックを許してきた。
もちろん、たとえ政治家の圧力があったとはいえ、今回のように書類の偽造にまで手を染めるのは異常だろう。
しかし、国税庁や警察庁のように、そういう圧力を撥ねつける「独自の力」を持っているところは別として、その他の「普通の」役所では、人物評価で減点主義が基本の霞が関においては、与党議員に睨まれることは最も避けなければならないことの一つだ。
議員と公務員の「直接接触」を許している限り、公務員側のこの「弱み」に議員がつけこまないはずがない。
多くの選挙民が、自分たちの「先生」が偉いかどうかを、役人に話を通してもらえるかどうかで測っているような現状では、このような口ききはなかなかなくならない。
ちょっと前に問題になった大分県での教員採用での不正についても、おそらくは多くの県で似たようなことが行われ、裏では地方議会の議員の「口きき」が存在しているという指摘もあった。
このような例は枚挙にいとまがなく、公共事業入札の指名、公営住宅の割り当て、公的融資、市職員の採用、さらには公共施設市内の売店の出店者の決定など、それこそあらゆる機会が口ききによって利権と化し、議員が自らの影響力を行使する機会となってきた。
政治的圧力に屈した公務員にはもちろん責任があるだろう。
しかし、その者を「逮捕」することだけでは、おそらく何も変わらない。
こんな事態になる前に、イギリスのデイリーテレグラフのように、日本の新聞が行政に蔓延する口ききを糾弾するキャンペーンを張り、政治が自己浄化できなかったのか。
ところが、今回の事件を契機に、そういう動きが起きそうにも見えない。
官僚主導政治と声高に非難する裏側で、議員としての「影響力」で国家公務員に圧力をかけ、行政を捻じ曲げる「恐喝政治」を行う政治のダブルスタンダードを、政権交替を機にきっぱりと撤廃し、法治国家にふさわしいルールに則った政治を実現してほしいものだ。
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