時の記憶

時代の記憶として残したいニュースの勝手な論評です。


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 メインストリームのニュースから少し外れたところにこそ、えてして時代の真実が隠されています…などと、たいそうなことを言うつもりはありません。
 でも、ちょっとしたニュースに何を感じ、何を考えたかを残すことで、自分の人生の軌跡みたいなものを残せないかな~と感じています。
 なので、私小説的な時事論評として読んでいただければと思います。
 もちろん、感想は下の「作者にメール」でお寄せください。
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騒ぐことで前航空幕僚長の第二の人生を実現してあげるマスコミの親切さ

2008年12月25日

 どこかの不動産業者による懸賞論文に応募した、田母神前航空幕僚長の論文が引き起こした困惑に懲りた防衛省が、「再発防止」策を公表した。

 この論文を募集したアパグループという不動産業者は、耐震偽装問題でも名を連ね、アパホテルの代表が謝罪会見をしているし、都内で販売した温泉尽きマンションでは、国の基準の9000倍近くものレジオネラ菌が検出されたらしい。
 国を憂う暇があれば、もっと自社のガバナンスをしっかりしてくれよと言いたいところだが、国を憂うことに比べれば、耐震偽装や公衆衛生などは瑣末な問題だということなのだろう。

 で、防衛省のその報告書は、今回の事件について、「防衛省・自衛隊に対する信頼を傷付け、文民統制の面からも適切ではない重大な事案だ」との認識だそうだが、今回の事件が「文民統制」の上で、どのような問題があったのか、私のような素人には、必ずしもはっきりしない。
 別に、指揮官の命令に反したり、クーデターを企てたりしたわけでないし、論文のレベルの低さはともかく、中国政府を不快にしただけで、直ちに文民統制上の問題を引き起こすとも思えない。

 確かに、肩書き付きの名前で寄稿しているようだが、何かに寄稿するときにには勤務先を書くわけだし、この論文を読んでも個人的見解であることは、はっきりしていると思う。
 仮に、勤務先を書かず名前だけで応募したとしても、このレベルの人になれば、肩書きなどはすぐわかってしまうわけだから、そうなると、そもそも個人的見解を表明することが怪しからん、ということなのだろう。

 予めそれが服務規定とされているならば、それは服務規程違反として扱われるべきだろうが、余暇時間を使って、過去の歴史についての個人的見解を発表することを、正面切って「禁止」することには、憲法上の問題があるかもしれない。
 公務員の政治活動については、その政治的中立性を確保するために、たとえ余暇時間を使ったとしてもダメだとされているが、今回のケースは、何十年も前の過去の出来事についての見解であり、そのようなものまで禁止することが、思想信条の自由に対する制限として、どこまで認められるのか、ビミョーな問題だろう。

 同じ歴史事件でも、蒙古襲来とか、秀吉の朝鮮出兵とかに関する見解ならば、今回のような問題にはならなかったわけで、どのテーマなら個人的見解を表明することはご法度で、どれならいいのかということをルール化することには、現実的に困難な面もあろう。

 かといって、そもそもそういう歴史認識を持つこと自体が問題だという論調も危険だ。
 一部のマスコミには、そもそもそういう歴史認識を持つこと自体が文民統制上、問題があるみたいな論調が見られるが、少なくともそれが個人的に持つ思想、歴史認識である限り、とやかく言われる筋合いではなく、個人が、私的に持つ信条まで問題にするとすれば、そっちの方が、憲法上、よっぽど問題だ。

 この報告書でも、「自衛官の適切な教育のために統一方針を策定する」とか、「幹部への昇進に当たっては一層適切な選考を実施する」という下りがあって、思想統制に踏み込み過ぎないように注意した表現にはなっているのだろうが、思想信条の自由を侵しかねない、危険水域だろう。

 公務員の政治活動の禁止にしても、それが内心の信条にとどまっている限り咎めることはできないのであり、それが「行動」として外に向かって表明されて始めて問題になる。
 そうでないと、自民党政権下では、公務員が民主党的な考え方を持つことも許されないことになる。
 その意味で、今回の事件は、単純なマスコミの論調ほどには単純ではなく、とても微妙な問題を孕むもののように思えてならない。

 はっきりしているのは、今回の件にしても、たとえ航空幕僚長であっても、それが内心の信条や歴史認識にとどまっている限り、たとえ軽蔑されたりバカにされることはあっても、非難されるいわれはないわけであって、それが行為として表現される場合に初めて問題になるということだろう。
 そして、それは自衛官の歴史教育で解決するのではなく、事前にきちんとしたルールを決めることで対応することのように思われる。

 もっとも、そんなことは、航空幕僚長ほどの人であれば、常識や良識で十分に分別がつく程度の問題であり、今回の件は、田母神氏が自分の第二の人生を、設計図どおりに実現するために確信犯的に引き起こした騒動なのだろう。
 退職後、手際よく本を出版することや、それに向けて小林よしのり氏といった「いかにも」な人達と対談をしたり、書評をとりつけたりするところも、なかなかビジネスマンとしてもやり手だなと感心させられた次第であった。

 結局のところ、怪しからんと書き立てるマスコミも、ギャーギャーとわめき散らす政治家も、田母神氏のビジネスプランどおりに動かされているだけであって、そういう作戦プランの見事さも、田母神氏は、防衛大学以来学んできたことを「実戦」に応用しているだけなのかもしれない。


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