時の記憶

時代の記憶として残したいニュースの勝手な論評です。


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 メインストリームのニュースから少し外れたところにこそ、えてして時代の真実が隠されています…などと、たいそうなことを言うつもりはありません。
 でも、ちょっとしたニュースに何を感じ、何を考えたかを残すことで、自分の人生の軌跡みたいなものを残せないかな~と感じています。
 なので、私小説的な時事論評として読んでいただければと思います。
 もちろん、感想は下の「作者にメール」でお寄せください。
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マーケットという賭場に加わるときに必要なこと

2008年12月21日

 貯蓄から投資と言われて久しい。
 バブルのとき、それからちょっと前のITバブルのときなどは、コツコツ貯金している人がまるで能無しかのような風潮すらあった。
 そういう迷惑な標語のおかげで、どれだけ多くの人が経済的に傷を負ったことだろう。

 人間は、学生時代に数学で苦しめられた人は特に(笑)、数式とか数字で示されると、わけもなく信頼度がアップする。
 なので、ブラック・ショールズ方程式とかいう、日本で何人きちんと書いて説明できるかわからないようなもので説明されると、「ほー、そんな確実に儲かる方法というのがあるのか。」と思ってしまう。
 まして、その式を書いてノーベル賞をもらった張本人が特定の投資会社にいるとなると、もうそれは神々しくさえある。

 そうやって、アメリカのLTCMは世界中の投資家、そして多くの金融のプロたちから巨額の金を集め、アジア金融危機とか、ロシア財政危機とか、彼らでさえ「予測できない」事態のために、沢山の人を道連れにして、ノーベル賞受賞の数年後に破綻した。
 日本人のノーベル賞は、本人が天命をまっとうしそうになるまで引き伸ばすくせに、金融工学の場合はこんなにも迅速に受賞させるのは、ノーベル財団の資金運用にとっても重要な問題だからだろうか(笑)。

 その程度の危機なら歴史上にちょくちょくあるし、もっとひどいことだって起きているのに、なぜそういうこともあり得るということが「予測できない」のか、私のような素人は、それさえ理解に苦しむだろうが、まあ、達人の世界というのは凡人では推し量ることができない世界なのだろう。

 もっとも、ブラック・ショールズの名誉のために言えば、彼らの問題は、アジア金融危機やロシア財政危機そのものを予測できなかったことではなく、その後の投資家の行動が彼らの予測に反したものだったからだ。
 とはいえ、沢山の金を投資している欲の皮の突っ張った人達ほど(失礼!)、いったんパニックになる人一倍慌てふためくわけで、金融工学は、そういう人間心理学的な部分を「合理性がない」として、バッサリ切り捨てているのかもしれない。
 だから、彼ら的に言えば、方程式どおりに「正しい」投資行動をしない投資家がアホなのだろうが、いくら「合理的に」倒産しても、倒産しては元も子もないだろう(笑)。

 今度のサブプライム恐慌だってそうだ。
 CDSというデリバティヴ金融商品が大量に出回り、それが金融危機を瞬く間に世界中に拡大したと言われている。
 融資の貸し倒れリスクを保証するかわりに、毎年保証料収入がもらえるという金融商品で、その価格を決めるのに難解な金融工学が用いられていた。

 その意味では、昔、ロイズ保険の再保険でイギリスの小金持ちたちが大火傷を負って文字通り一文無しになったことがあったが、あれと同じような仕組みなのだろう。
 あの時も、今回も、リスクを巧妙に分散すると、あたかもリスクがなくなるかのような錯覚に惑わされたのかもしれないが、決してそんなことはないのであって、ひとたび巨大なリスクが襲うと、その網の目のように分散した回路を電撃が走るように、回路にぶら下がっている人達をすべて破壊し尽くしてしまう。

 リスクの評価というのは、かなりマヤカシっぽいものだ。
 6分の1の確率と言われても、次に起きるかもしれないし、6回サイコロを振っても一度も出ないかもわからない。
 何万回も同じことをしてならせば、そういう割合で起きるということだ。
 個人投資家にとっては、たとえ1万分の1の確率と言われることでも、起きてしまえば、本人にとっては1分の1だ。
 それで破産してはたまったものではない。

 もっとも、当たり前のことだが、ブラック・ショールズにしても、CDSにしても、金融理論に罪はない。
 そういう理論がないときに比べれば、様々な金融商品の根付けが「理論的に」行えるようになって、すごく便利になった。

 ただ、どんなに頭のいい人たちが、どんなにこみいったことをしようと、それがノーベル賞学者だろうと、エール大学やハーバード大学だろうと、リスクを消す魔術はないということだ。
 そんな当たり前のことが、金融工学の呪文で見えなくなってしまったことが問題なのだろう。

 リスク許容度という言葉がある。
 簡単に言えば、どこまでバクチでスッてもいいか、という基準だ。
 市場や相場は、サイコロ賭博よりは少し上品だが、結局のところ、リスクとリターンの世界で儲けるというところでは、兄弟のようなものだ。
 なので、貯蓄から投資へという掛け声で、賭場に参加するときは、「どこまでスッたら止めるか」という基準をしっかり持たなければいけないということを、エール大学やハーバード大学という、超一流の大学が自ら授業料を払って私たちに教えてくれたということだろう。

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■米エール大 金融危機で5200億円大損

 ハーバード大の運用資金が約80億ドル(7020億円)減少。エール大も約59億ドル(約5200億円)の損失。
 日本では、駒沢大が154億円、立正大は148億円の損失。


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